デスノ13【むかしむかし……】<第1夜>(ニアメロ)

※閲覧注意※
BL小説です!!!




■咲耶さんリク【むかしむかし……】(ニアメロ)■パラレル童話風ギャグ?


-その1-

<第一夜>



『むかしむかしある所に、

 ひとりの王子様がおりました……』



珍しくニアは睡眠不足を感じていた。
原因ははっきりしている。妙な夢を見た。
ニアが、事件に関係のない夢を見ることなど、滅多にない。
だが、夕べニアが見たのは何ともファンタジーな夢だった。


そこは、まるでグリムの童話にでも出てきそうな緑の森。小鳥達が歌い、ずっと続く一本道は野の花に囲まれていた。
小鳥達は歌う。

<むかしむかしある所に、>

<ひとりの王子様がおりました……>

<王子様は森の道を歩いてゆきました>

ニアはくすりと笑った。
何しろこの王子様が着ているのは上下のスウェットに、足はといえば、何も履いていない。
―――裸足の王子様、か。
冗談とも思えない事がとてもおかしく思えて、
ニアはくすくすと笑った。
何も履いていない自分の足を見、そしてその目が自然と足の乗った地面を追う。
この先には何があるのだろう。
ぴたぴたと裸足の足音を響かせながら、ニアは歩いていった。

<そして王子様は 見つけました>

それを見たニアは目を丸くした。
お約束といえばお約束だが……。
ニアの目の前に忽然と現れた、それ。
―――お菓子の、家……。
ぽかっと口まで開けてしまったニアの目の前で、お菓子の家の、砂糖細工の扉がゆっくりと開いた。
入れと言う事だ。
どうしたものか。
ふと顔を上げると、枝にとまった一羽の小鳥と目が合った。
―――これは…?
誰かに似ている。立ち止まったままじいっと鳥を見つめる。何だか普通の鳥と違う気がする…。
なぜか流れる気まずい沈黙。
と、鳥が突然羽ばたいて、羽ばたきながら大きな声で歌いだした。

<そ、そして王子様は 中へと入ってゆきました!!!!>

歌うというよりは叫ぶ、と言った方が適当だろう。まるで入ってもらわなければ困るとでもいうような勢いだ。
小鳥はわめくようにけたたましく歌い続ける。

<入りましたっ>

「………」

<入りましたっ!>

「………」

<入りましたってば~~~~~!!!!>

「……わかりました」


『そうして、王子様はお菓子の家に入ってゆきました』



『中へ入ってみると

 中には だれもいませんでした』

―――これは……。
 夢なんて不条理なもの、と分かっていても驚いた。
 そこは、ワイミーズハウスのニアの部屋だった。振り向くと、窓の外に子供達の姿が見える。
 ニアは窓へ駆け寄った。
 皆いる。
 リンダも、マットも、他の子供達も。
 ニアが、一番合いたい彼だけを残して。
 ニアは、入ってきたドアへと走った。
 

『ところが いったいどんな魔法でしょう
 
 王子は 外へでることが できません』

「!」
 確かに開いていたドアは、ニアの手が触れようとした瞬間、固く閉ざされてしまった。回そうとしたドアノブは、根元からボロリと取れてしまった。
 ニアが、手の中に残されたドアノブを見ると、それは手の中で溶け始めた。

―――これ……

 ニアは鼻をくんと鳴らした。
 嗅ぎなれた匂いがする。

―――チョコレート…!
 そう思った瞬間、天井から何かがばらばらと降ってきた。

「いたっ」

 頭を押さえてしゃがみこんだニアが降り止んだ気配に目を開けると、部屋のそちらこちらに茶色い何かが散らばっていた。

「……?」

 手近にあったそれを拾い上げると、それはパズルのピースだった。
 チョコレートでできた。
 そしてそれは、手にした瞬間から、ゆっくりと溶け始める。
 どうやらこれは、時間制限のあるゲームらしい。
 ニアは、何の疑いもなくそれを拾い集め、組み立て始めた。部屋中を走り回り、溶けるピースと格闘しながら、可能な限りの早さで隙間を埋めてゆく。

―――あと、一つ

 ニアは最後のピースを埋め、巨大な板チョコを完成させた。
 その瞬間。

「あっ」

 巨大チョコは一瞬にして溶け、ニアは思わずその中に手を突っ込んでしまった。
 だが掴んだのは、手ごたえのない溶けたチョコレート……。
 さすがに途方に暮れて手を見つめていると、

<舐めてやろうか?>

 懐かしい声がした。

―――!

 顔を上げたニアの目の前で、解けたチョコレートが盛り上がってゆき、人の頭を形作る。

「メ……」

<時間がない、早くしろ>

 ニアは言われるままに手を伸ばし、指をその唇に差し出した。
 ちゅ……、と指を吸われる感触。

―――あ……

 思わず目を閉じて……

 次に目を開けたときは、朝だった。


 本当に、おかしな夢だった。
 出てきた小鳥たちも、多分皆ワイミーズの子供達だった。
 あの、慌てた小鳥はサングラスをしていたと思う。
 その場で気付かないのが、夢の中の感覚の間抜けた所だろう。
 床に散らばったパズルのピースを手にとって、ニアはふと自分の指を見た。
 この指を舐めた、あの舌。
 あの、唇……。

「ニア…?」

 おそるおそるといった感じにかけられた声にはっと我に返ると、ニアは自分の口に指を入れていた。つまんだピースごと。

「おはようございます、リドナー」

 何事もなかったかのように振り向くと、ニアはいつものように次々と指示を与えだした。

「資料Y-12をFBIへ。それからレスターに、Mr.相沢と繋ぐように伝えてください。ジェバンニは偽装工作の結果報告を…」

 いつもよりすごいスピードで、次から次へと指示を出し、仕事をこなしてゆく。彼の事を考えていてぼんやりしていたのが、恥かしかったのだ。
 それでも気になって、指示を出す合間にそっと指を嗅いでみたが、むろん、チョコレートの匂いなどはしなかった。




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